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「私道」と「通行掘削承諾書」について

不動産のこと

今日は不動産の話です。

僕が買取を検討している中古住宅の前面道路(私道)の道路共有者のうちのお一人のお宅へ、「通行掘削承諾書」を頂きに伺ってきました。

そこで、「私道」「通行掘削承諾書」について、わかりやすく説明したいと思います。

公道と私道

日本の道路は、「公道」「私道」とに分かれています。

「公道」とは、例えば高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市区町村道など、国や地方自治体などが管理する公の道路のことです。

これに対して、「私道」は私的に所有・利用される道路状の土地のことをいいます。

通行掘削承諾書とは?

公共の道路である公道と異なり、私道を使用する際には、私道の所有者から次の行為について承諾が必要となります。

  • ガス管、上下水道管の埋設及び引き込み工事を行なうこと
  • 上記の工事のために道路を掘削したり、埋め戻しを行うこと
  • 人や車両が無償で通行したり使用したりすること

その承諾を証明する書面が「通行掘削承諾書」です。

所有権を持たない私道に接する土地を売却する際に「通行掘削承諾書」が無い場合、買主に対し道路の通行や掘削などが制限され、建築やインフラ工事ができない恐れがあるなど様々なトラブルが生じることが予想されます。

民法による規定

所有権を持たない土地の通行に関しては、民法第210条に規定があります。

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

民法第210条

他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者が、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地(いにょうち))を通行できるとする権利で、「囲繞地通行権」といわれます。

また、上下水道管やガス管などのライフラインについても、2023年4月の民法改正により、民法第213条の2に規定が明文化されました。

土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。

 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。

 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

民法第213条の2

あらかじめ私道の所有者に通知をすることにより、他の土地にライフラインの設備を設置する権利(設備設置権)と、他人が所有するライフラインの設備を使用する権利(設備使用権)が認められます。

ただし、他人の土地や設備に損害を与えた場合は賞金を支払わなければならず、また、利益を受ける分、維持や修繕にかかる費用も負担しなければなりません。

通行掘削承諾書は必要なのか

もちろん、原則として私道に持分を持っていれば、私道を通行する権利も掘削する権利も有します。

また、持分を持たない場合でも上述のとおり民法により「囲繞地通行権」「設備設置権」及び「設備使用権」が認められてはいます。

ですが、例えば皆さんが仲良く暮らすコミュニティに、ある日突然新しい住人がやってきて、

我が物顔で「通行は当然の権利」と主張してきたら、どんな気分になりますか?そして、突然通知だけをよこして道路を掘削し始めたら、どう思いますか?

法律で権利を守られていることと、人の感情はまた別のものです。その新しい住人に対して不快な感情を持つ人がいても不思議ではありません。

そのようなケースを避け、売主・買主お互いに気持ちの良い不動産売買契約をするためにも、僕は売主による「通行掘削承諾書」の取得は「必要」だと考えます。

売主が私道の所有者に対し「通行掘削承諾書」の交付を依頼することで、私道の所有者に対し「近いうちに新しい住人が来るんだな」と意識させることができますし、

そもそも売主が「通行掘削承諾書」で得た承諾は通常、買主である第三者にも承継される旨の記載がありますので、買主もその承諾を証明することができます。

また、上下水道管やガス管を敷設する場合には水道局やガス会社から「通行掘削承諾書」の提出を求められることもありますので、

新参者である買主が私道の所有者から承諾を取るよりも、今までの所有者である売主が承諾を取ることの方がハードルが低いと予想します。

今回の僕のケース

今回僕は、自分(の会社)が買主となりますが、売主様が遠方にいて自身で対応ができないため、売主様から委任を受け代わりに動いています。

昭和40年代に造成されたかなり古い住宅地ですので、分譲当初は20人で共有していた道路も、何名かに相続が発生したため現在の所有者は全部でなんと30人!

売主様は持分をお持ちですので、残り29人から「通行掘削承諾書」を取得するべく動いていますが、行方が分からない所有者も数名いらっしゃいます・・・。

このように複数人で私道を共有している場合、共有者のうちの誰かが亡くなったりすると、相続が発生し共有者の数が増えたり、相続登記未了で行方がわからないという可能性が増えます。

私道の「通行掘削承諾書」は、なるべく早めに取得しておいた方がよいですね。

まとめ

「私道」とは私的に所有・利用される道路状の土地のことをいいます。私道を使用する際には、私道の所有者から次の行為について承諾が必要となります。

  • ガス管、上下水道管の埋設及び引き込み工事を行なうこと
  • 上記の工事のために道路を掘削したり、埋め戻しを行うこと
  • 人や車両が無償で通行したり使用したりすること

その承諾を証明する書面が「通行掘削承諾書」です。

原則として私道に持分を持っていれば、私道を通行する権利も掘削する権利も有します。

また、持分を持たない場合でも上述のとおり民法により「囲繞地通行権」「設備設置権」及び「設備使用権」が認められてはいますが、法律で権利を守られていることと、人の感情はまた別のものです。

私道の所有者の中で買主に対して不快な感情を持つ人が現れることを防ぎ、売主・買主お互いに気持ちの良い不動産売買契約をするためにも、

僕は売主による「通行掘削承諾書」の取得は「必要」だと考えます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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