「市街化調整区域」の物件を売買する際、注意するべきこと

不動産

今日は不動産の話です。

先日、買取の査定依頼を受けて内見をした物件は市街化調整区域内にある物件でした。

市街化調整区域内にある物件の売買を行う場合、「再建築できるかどうか」が最大のポイントとなります。

そこで、「市街化調整区域」について、わかりやすく説明したいと思います。

市街化調整区域とは

市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

都市計画法第7条第3項

「市街化」とは建物を建てて街づくりを推進していくことをいい、「市街化調整区域」とは都市計画法により街づくりを抑え市街化を抑制していくことを定めた地域のことです。

つまり市街化調整区域では、原則として新たに建物を建てることができません。

市街化調整区域が設けられた理由は、乱開発を防止することで農地の減少を防ぎ、同時に市街化区域(=街づくりを積極的に行う地域)をコンパクトシティ化させることで、街の管理をしやすくし、自治体の運営費増加を防ぐためです。

市街化調整区域内にある物件の6つのデメリット

市街化調整区域内にある物件には以下の6つのデメリットがあり、市街化区域内の物件と比べると割安な価格で売買されることが多いです。

インフラ環境が整っていない

市街化調整区域は、そもそも一般の人が多く住むことを想定した地域ではありません。そのため、インフラ環境が整っていないことが多いです。

  • 上水道が整備されておらず、井戸を使用している
  • 下水道が整備されておらず、浄化槽や汲み取り式便槽を使用している
  • 都市ガスが整備されておらず、プロパンガスを使用している

などといった場合も多く、単独でそれらのインフラを整えるのは容易ではありません。

生活利便性が悪い

市街化調整区域は主に農村地帯であることが多く、また、建物を建てることができない地域のため、日常生活に必要な商業施設も原則として建てられません。

コンビニやスーパー、学校、病院、娯楽施設などが近くにないという場合が多く、それらの施設を利用したい場合、離れた場所まで出かけて行く必要があり、生活の利便性が悪いことが多いです。

地目が農地になっている場合、手続きが面倒

市街化調整区域は主に農村地帯であることが多いため、まれに地目が「宅地」ではなく「畑」などの農地のまま、家が建っていることがあります。

農地に家を建てるには、農地を宅地に変更する「農地転用許可」の手続きが必要となりますが、地目が農地のままですでに家が建っている場合、その農地転用許可を受けたものの、その後に「地目変更登記申請」を怠っている可能性があります。

このケースでは、まず農業委員会へ「現況証明願」の手続きをしたうえで、土地家屋調査士へ「地目変更登記」申請の依頼をする必要があり、手間と費用がかかります。

なお、かなり稀なケースだと思いますが、「農地転用許可」の履歴がない場合は、違反建築の可能性がありますので、注意が必要です。

一度更地にしてしまうと再建築ができない場合がある

そもそも市街化調整区域は建物を建てることができない地域のため、現在住宅が建っているとしても、その住宅を取り壊し一旦更地にしてしまうと再建築ができない場合がありますので、安易な解体には注意が必要です。

購入時に住宅ローンを利用できない可能性がある

市街化調整区域の物件については、金融機関から資産価値が低いと判断され、担保評価が低くなり、購入時に住宅ローンを利用できない可能性があります。

実際、僕も「市街化調整区域内の物件でも買取してもらえるか?」との問い合わせをよく頂きますが、住宅ローンが利用できないことが主な理由で、「市街化調整区域内で再建築ができない物件は、原則として買取できません。」とお答えしていています。

ただし、市街化調整区域内の物件でも、住宅を再建築できる条件を満たしていれば、住宅ローンを利用できる場合があります。

売却時に「契約不適合責任」のリスクがある

「契約不適合責任」とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。

再建築ができない物件は「法的瑕疵」に該当し、売主から買主に対して「告知義務」があります。

売買契約前に買主が自分で、再建築が可能か否かについて詳しく調査することは難しい場合が多いため、買主が保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。

そこで買主を保護するために、「契約不適合責任」が民法に定められているわけです。

再建築ができない物件であることを売主が買主に告知せずに売却した場合、「契約不適合責任」を問われ、契約の解除や損害賠償請求などを受けることになります。

市街化調整区域内でも住宅を建て替えられる4つのケース

市街化調整区域は、原則として街づくりを抑え市街化を抑制していく地域のため、原則として自治体から「開発許可」を受けなければ、建物を建て替えることができません。

ただしこの「開発許可」を受けられる建物は学校や老人ホーム、日用品の店舗などに限られており、住宅を建て替えたい場合は、「開発許可」が不要となる以下の4つのケースに該当する必要があります。

農林漁業を営む者の居住用建築物や分家住宅

農業や漁業、林業を営んでいる人の居住用建築物は、開発許可が不要の建物に当たるため、農家の方や漁師の方であれば、住宅であっても市街化調整区域に建てることができます。

また、農業や漁業、林業を営んでいる本家から分家した人が建てる住宅のことを「分家住宅」といい、この分家住宅も開発許可不要で建てられる場合がありますが、本家・分家ともに一定の条件をクリアする必要があります。

デベロッパーが開発許可を受けて開発した分譲宅地

市街化調整区域内でも、デベロッパーがすでに開発許可を受けて開発した分譲宅地であれば、後から購入した一般の人でも家を建てることができます。

周辺は同じような年代の家が建ち並び、住宅地が形成されていますので、一見すると市街化調整区域には見えないような環境です。

線引き前からの既存宅地、既存住宅

土地および建物の登記事項証明書や、市街化調整区域に指定された時点での固定資産税課税証明書などの公的証明書によって、市街化調整区域に線引きされる前から宅地であること(「既存宅地」)、建物が建っていたこと(「既存住宅」)が確認できれば、再建築が可能な場合があります。

ただし、制限なく建築できるわけではなく、基本的に次のような要件を満たしたうえで、自治体から「建築許可」を受ける必要があります。

  • 同一の用途(居宅)であること
  • 同一の敷地(敷地の合筆や分筆などをしていない)であること
  • 同一の規模(既存住宅の延べ床面積の1.5倍以内など)であること

建築物が連たんしている地域の住宅

市街化調整区域でも、都市計画法第34条11号に定められた立地基準を満たす土地であれば、開発許可申請は必要ですが、家を建てられる可能性は高くなります。

いわゆる「50戸連たん制度」といいますが、土砂災害警戒区域等をはじめとする災害により被害が生じる危険のある区域(災害ハザードエリア)は含まれません。

市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの

都市計画法第34条11号

今回の僕のケース

ちなみに僕の勤務する会社は不動産買取会社ですので、もちろん今回、僕(の会社)が買取を検討するため物件の現地を確認しました。

今回の物件は都市計画法第34条11号に定められた「50戸連たん制度」(ちなみに熊本市では「集落内開発制度」と呼んでいます)が適用できる物件であり、かつ、「既存宅地」でもありました。

そのため原則は再建築不可ですが、条件付きで開発許可不要での再建築が可能であり住宅ローンも利用できるため、僕(の会社)でも買取検討ができる物件でした。

ただし周辺環境は住宅街というよりも農村集落のイメージが強い地域でしたので、それを考慮した買取査定額を提示させてもらいました。

査定金額自体は多少ご希望を下回るものとなりましたが、再建築に関してのデメリットを気にせず売却でき、さらに「契約不適合責任」が免責なので引き渡し後もクレームが発生しないことをメリットと感じてもらえればいいなと思います。

まとめ

「市街化調整区域」とは都市計画法に定められた、街づくりを抑え市街化を抑制していく地域のことです。つまり市街化調整区域では、原則として新たに建物を建てることができません。

市街化調整区域内の物件のデメリットは下記の6つが考えられます。

  • インフラ環境が整っていない
  • 生活利便性が悪い
  • 地目が農地になっている場合、手続きが面倒
  • 住宅ローンを利用できない可能性がある
  • 一度更地にしてしまうと再建築ができない場合がある
  • 売却時に「契約不適合責任」のリスクがある

市街化調整区域は、原則として自治体から「開発許可」を受けなければ、建物を建て替えることができません。ただしこの「開発許可」を受けなくても住宅の建築ができる4つのケースがあります。

  • 農林漁業を営む者の居住用建築物や分家住宅
  • デベロッパーが開発許可を受けて開発した分譲宅地
  • 線引き前からの既存宅地、既存住宅
  • 建築物が連たんしている地域の住宅

市街化調整区域内にある物件の売買を行う場合、「再建築できるかどうか」が最大のポイントとなります。

再建築ができる物件であれば、買主側からすれば割安な価格で不動産を購入できる可能性があるため、市街化調整区域内であっても一定の需要はあると思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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